住まいは、地震で強く揺すられても壊れないことが重要です。
地震に強い住まいを作る為には、地震に耐える強さや工夫が必要です。
そこで、現在の住まいはどのようにして地震に耐える作りとしているのか紹介しましょう。
地震に耐えるための構造としては、耐震構造と免震構造と制震構造の3種類があります。
耐震構造
地震の際に住宅にかかる力を、建物の強度のみで支える構造のことです。
最も一般的に使われている構造で、住宅の筋かい等も耐震構造の考え方の上で成り立っています。
また免震構造や制震構造を採用した場合でも地震による力をゼロには出来ないので、耐震構造を併用することになります。
耐震構造は、大きな地震が来ても倒壊しないことを前提に考えられています。
あくまで倒壊しないことしか考えていないので、建物の変形によって窓が破損したり、ドアが開かなくなったりすることもあります。
また建物の部材が壊れることで過剰な地震のエネルギーを吸収する場合も多く、壁にヒビが入ったり、梁が損傷したりすることも多くなります。
地震の揺れによって住宅内部も揺れるので、家具や食器類の倒壊や破損による被害も多くなり、洗面器など設備関係の損傷も生じやすくなります。
また、大きな地震の後では見えない構造部分が損傷していることも考えられるので、構造体のチェックを行うことが大切です。
住まいを耐震構造とする場合、大地震の際の構造部分の被害想定によって何段階か強さのグレードに分けられます。
原子力発電所のような構造部分に少しの傷が入っても問題になる場合には、大地震で大きく揺すられても構造部分が少しも損傷もしないように造る必要があります。
学校や集会場など人が多く集まる建物や重要な建物は、構造部分が多少損傷しても、窓やドアが破損しない程度の変形に抑える必要があります。
住宅のような一般の建物では、構造部分が損壊しても中の人が押しつぶされて死なない程度に、完全に壊れることを防ぐことを第一として考えています。
住宅を原子力発電並みに損傷しないような建物として造ると、構造部分にコストが掛かりすぎたり、開口部分を十分に採れないことにもなってしまいます。
そこで普段の快適性と住宅建設コストと耐震性のバランスから、現状の最低限必要な構造規定が出来ているともいえるのです。
地震の揺れに対する住まいの強さを強めたい場合は、重要な建物のように構造部分が多少損傷しても、窓やドアが破損しない程度の変形に抑える程度の強さを確保することがポイントといえそうです。
またどんなに住宅の強度を上げても、地震による室内の揺れは小さくならないので、家具などの倒壊による怪我の危険性は残ってしまいます。
そこで地震の際における建物自体の揺れを抑える構造として、免震構造と制震構造が生まれました。
免震構造
地震の際に建物の揺れ自体を小さくするような、地面と建物の間に緩衝体を持った構造のことを免震構造と言います。
地盤(基礎部分)と建物の間に、建物の揺れを少なく出来る緩衝体を挟み、その緩衝体で地震による横揺れを10分の1程度(緩衝体によってこの割合は異なります)まで減少させます。
緩衝体としては、空気で浮かせたり、ゴムや鉛を組み合わせた物や、ばね状の物や半球体と受け皿を組み合わせた物などが使用されます。
ゴムと鉛の組み合わせでは、ゴムが揺れを減少させて、鉛部分がゴムによる不要な揺れを抑えます。
バネ状の免震は、バネの部分で地震の揺れを吸収するので、揺れのコントロールが少し難しくなります。
滑りを利用する免震は、地震の揺れが大きくなると受け皿状部分だけが動き、上部の半球部分が残される形になるので地震による揺れを抑えることが出来ます。
この考え方は、伝統的な木造住宅の作り方である、玉石の上に玉石に合わせて下部を削った柱を置いていた状態と同じような状態といえます。
空気で浮かせる免震は、地震の揺れを感知したら素早く空気を送り、建物を浮かせることで地震の揺れを減らします。
常に空気で浮かせておくと無駄に電気代がかかり、騒音や風による揺れの問題もあるので、地震の揺れを感知した直後に働らかせます。
また給排水やガス管など設備の配管部分も、地震の際の動きに対応出来る様に造ります。
免震構造は地震の揺れ自体を少なくすることが出来るので、住宅内部の家具や食器などの倒壊や破損も防ぐことが出来るという効果があります。
大地震が起きても給水やガスなどが通じている限り、普通の状態で生活できるという大きな利点があります。
住まいで採用される免震構造は、滑りを利用するタイプと空気で浮かせるタイプが主流です。
免震構造の欠点は建設コストが掛かること(一般的な住宅の大きさでも数百万円の追加)と、免震部分の定期的なチェックが必要な点です。
また強風時には建物の揺れが大きくなる傾向があり、また地震の縦揺れには効果がない免震構造がほとんどです。
そこで、このような弱点を理解した上で採用することが大切です。
制震構造
制震構造は、地震による力を抑制する仕組みを備えた構造のことです。
電気などのエネルギーを用いたダンパーなどで揺れを制御するアクティブ型の免新装置と、エネルギーのかからない物理的な力を制震に利用するパッシブ型に大別できます。
建物が変形して初めて効果を発揮するので免震構造より揺れを抑える効果は少ないのですが、風による揺れも抑えることが出来るという利点があります。
パッシブ型の制震構造には、建物の上部に重いものを設置して、その反力で揺れを抑える構造や粘性や弾力性の有る材を設置して揺れのエネルギーを吸収する構造などさまざまな方法があります。
アクティブ型の制震構造には、ダンパー制御や逆振動発生装置など、こちらにもさまざまな方式があり、停電に備えた電源を装備しています。
パッシブ型はメンテナンスがほとんど掛かりませんが、アクティブ型は制震装置と制御するコンピューター両方のメンテナンスが必要になります。
アクティブ型は風に弱い高層ビル向きの構造なので、通常住宅で使用される制震構造はパッシブ型です。
柱と梁の接続部分に設置するタイプや、筋かいの部分に設置するタイプがよく使われます。
制震構造は免震構造より安価に設置できますが、地震の揺れを減少させる効果も弱いので、家具の固定など室内の地震対策は耐震構造と同じように必要となります。
コストで考えれば耐震構造がベストなのですが、大地震時の被害をできるだけ無くしたい場合は免震構造が一番です。
制震構造は高さが低い住宅では揺れを抑える効果としては少なくなるので、大地震の際に建物が損傷することを抑える構造と割り切って使用することが大切です。